日常の世間話的なことを、極めて個人的偏見で、つれづれなるままに書き連ねたエッセイ的雑記帳。
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■スタンドバイミー■
2004/08

 
  先日、大学の同窓会が開かれた。個人的にはサークルの後輩とのつながりなどで、大学にはちょこちょこ足を運ぶが、在学中に大学生活を共有した先輩・後輩や同回生のなかには、会うのは実に卒業以来という顔ぶれもあり、とても懐かしかった。
今回私が一番会うのを楽しみにしていた人物がいた。同回生の親友Sちゃんだ。お互いサバサバした性格だもんで「便りのないのは良い便り」とばかりに、彼女の結婚などでバタバタしているうちに、年賀状のやり取りさえ途絶えてしまっていた。結婚を機に吉野の山奥に居を構えた彼女は、大好きな自然に囲まれて、野に山に川に海に、アクティブな毎日を送っていた。だから、私はわたしで彼女の幸せな生活を思い描き、今もなおそうしているものと安心しきっていた。
しかし、 この夏開催された同窓会の連絡を取るにあたって、初めて私は彼女の最新の近況を知った。私の知らぬ間に彼女は1人息子を連れて、郷里の九州に帰っていた。御主人が突然亡くなったからだった。そのことを1年以上経った、ついこの間、私は初めて知ったのだった。それも人伝てに…。報告してくれなかった周りの人達の配慮のなさや、彼女の近況を呑気に考えていた今までの自分に訳もなくハラが立ち、そして彼女の今を思うとやるせなかった。
かくして、Sちゃんとの再会が叶った。思いきって3泊4日と日程を割いて、我が家を拠点に近畿圏内でSちゃんは、立ち寄りたいと計画していたいろいろな場所に足を伸ばし、懐かしい人にも会って来たようだった。
Sちゃんが郷里に帰ってゆく前日、私達はジムニーを転がして、生駒から吉野を目指した。御主人のお墓参りも兼ねた、小さな旅行になった。目指す吉野の十津川という村は、奈良県の最南端で、北部の生駒からはざっと3〜4時間の場所だ。夕方になって、一通りの目的を果たした私達はSちゃんの提案で、そのまま車を南に向けた。県境を越えて和歌山に達した。Sちゃんにとっては懐かしい風景、私にとっては珍しい海の景色にお互い興奮しながら、車はついに岬に到達した。まるで紀伊半島を北から南へ縦断するような形になってしまった。
そこは「くじらの町」太地町。梶取崎という灯台のある岬だった。
ついに暗くなってしまった岬から、Sちゃんと私はそれぞれの思いを胸に夜の海を眺めていた。私達は卒業以来、それぞれ別の生活を過ごし、別々の成長を遂げた。でも、この小さな冒険での私達は、昔となんら変わりはなかった。Sちゃんの案内で、帰りに2人で新宮の寿司やで美味しいお寿司を食べた。Sちゃんとカウンターに肩を並べ、極上のお寿司を頬張りながら、ふと私は「しあわせ」について考えていた。Sちゃんの幸せのために自分ができる事はなにか…?本当に彼女の良き理解者でいられるのか?結局答えは全然見つからないままだけど…。
この夏の小さな冒険。灯台の灯りだけが便りの夜の岬。灯りの照らすその先には、穏やかな海がひらけていて、きっとそれがそれぞれの「しあわせ」の形になっているに違いないと信じて…。